需要と供給のバランスを見て、商品やサービスの価格を随時変動させる価格戦略をダイナミックプライシングと言います。そのメリットは収益を最大化できるだけでなく、在庫の最適化、顧客満足の獲得、リピート率の向上などが…
得られることにあります。一方、顧客も需要が低い時期には安価で商品やサービスを購入できるようになります。ダイナミックプライシングによって需給のバランスがより適正になる仕組みや事例をまとめます。
ダイナミックプライシングの仕組み
ダイナミックプライシングを実施するには、需要を正しく把握•評価し、それに応じて適切な価格設定が大事です。価格設定の方法は、おもに以下の2つがあります。
- 売上データや顧客のニーズ、市況動向の分析をもとに、価格を設定する
- AI技術を活用し、最適な価格を算出させる
売上や顧客のニーズの分析をもとに、価格を設定する
販売データの分析を行い、価格を変動させても経営が成り立つ価格を決定していく手法です。分析と価格決定を人力で行うのが特徴です。分析には、月ごと､週ごとの売上と利益、顧客の傾向やニーズ、固定費や変動費も含めた年間コストなどさまざまなデータを用います。以前から使われてきた手法であるものの、商品数が多いほど手間と時間をとられるのが難点です。また担当者個人の経験値､スキルによって、精度が大きく異なることがあります。
AI技術を活用し、最適な価格を算出させる
分析と価格設定にAIやビッグデータを活用する方法で、導入企業が増えています。AI技術の向上で、ビッグデータの分析と最適かつ精度の高い値段設定を導き出すことができるようになっています。AIの活用によって、リアルタイムのデータを反映させた分析と、高精度の予測を短時間で出すことが可能になります。担当者の経験値によって起こるバラツキを減らし適切な人員配置を容易にするメリットもあります。
ダイナミックプライシングの事例
ダイナミックプライシングはさまざまな業界や分野で導入されています。ここでは代表的な事例を紹介します。
ホテル
ホテル業界ではダイナミックプライシングの採用事例が増えています。需要が高い時期は宿泊料金を高く設定し、需要が低い時期は安く設定することで稼働率を高める取り組みがされています。また、天候などのリアルタイムの要因をも考慮して価格変動されるホテルもあります。ホテルチェーンではAIやビッグデータを活用したダイナミックプライシングが取り入れられています。
プロ野球
プロ野球の観戦チケットでは、試合の対戦カードや開催日などによって価格を変動させる球団があります。中日ドラゴンズや千葉ロッテマリーンズなどでは試合開催日、対戦チームなどに応じてダイナミックプライシングを実施しています。
鉄道
鉄道業界でもダイナミックプライシングの試みが実施されています。需要の高い時間帯や路線、低い時間帯や路線で価格を変動させ、利用者の分散化と収益の最大化を図る試みです。JR東日本では「オフピーク定期券」を導入することで朝夕のラッシュ時間帯を分散させています。。
チケット
チケット販売業界では以前からダイナミックプライシングの考え方があります。コンサートやライブなどのイベントチケットは人気の度合い、時期などで価格が異なっています。さらに最近では、チケットぴあはAIを活用したダイナミックプライシングサービスで顧客の満足度と収益性の両方を上げる取り組みをしています。
まとめ
ダイナミックプライシングは、需要と供給のバランスの変化に応じて商品の価格を随時変動させる価格戦略です。企業は収益を最大化できるだけでなく、在庫の最適化、顧客満足度の向上、人員配置の最適化などのメリットを得られます。一方、消費者も需要が低い時期には安価で商品やサービスを利用できるメリットがあります。ダイナミックプライシングはさまざまな業界や分野で導入されており、近年はAIやビッグデータを採用し、効率的かつ精度の高い価格設定を実現している企業が増加しています。
